夕方、洗足池駅の改札を出ると、木製の商店街のサインが灯ります。
家路を急ぐ人の癒しになるようにと、穏やかね色合いが連なる商店街を進んでいくと、ふたつ目の路地を左へ。
洗足池郵便局の隣に、こちらもオシャレなサインが目に止まります。
今月のヒストリーは、「E -OTTO CYCLES(イーオットサイクルス)」の店主斉藤和幸さんです。
和幸さんは、横浜市生まれ、家業も自転車とは無縁、ご自身も都内の飲食店で経験を重ねて来られました。
「創作料理、薬膳カレー、ラーメン屋などいろんな店で働き、オープンから運営、オリジナル商品の開発までやってましたね」
「夜遅いから、通勤は自転車でしたね!」
そんなバリバリ飲食業界の斉藤さんが、なぜ、自転車屋を開いたのでしょうか。

拘束時間の長い飲食業界を離れてみようと思ったのは、30歳の頃でした。
武蔵小杉の大手自転車チェーン店に就職。
これが斉藤さんと自転車との出会いでした。
そこで自転車のメカや楽しさに触れながらも、結婚を機に退職を考えていた頃のこと。
常連のお客様から
「なんで辞めるんだよ、困るよ、だったら、独立して自転車屋やってよ!」
と引き止められたのでした。
きっと、和幸さんの腕も人柄も評判だったのでしょう。
「じゃあ、そうしようかなって、自転車屋をやることに決めました」
ええっ〜〜、そんな感じで独立を決めたのですか?
パートナーの実家が東雪谷で、このエリアには前から愛着もありました。
子供が生まれた時、
「子供にとって、父親の店が近くにあったら楽しくないですか?小学校とか帰りに寄れるし」
こうして、2023年、現在の場所に「E -OTTO CYCLES(イーオットサイクルス)」をオープン。
店内の内装もおしゃれだし、飾ってある自転車もなんだかプロ仕様な感じ、帽子が似合う和幸さん
シュッとした風貌。
店のロゴもイカしてますが、デザインは?と思いわず聞いてしまいました。
「子供の保育園が一緒だった知人のデザイナーさんです」
「店を地元に根付かせたい」「できるだけ、洗足池周辺の近しい人に店作りも依頼したい」という
地元愛から店作りもスタートし、洗足池商店街に溶け込みむ店となりました。
アシスト付きママチャリバイカーの私には、何やら自転車マニアの集まる敷居の高い印象を持っていました。
ある日、自転車のパンク修理を恐る恐るお願いしたときのこと。
パンク修理はもちろんですが、油をさしたり、その他の調整もしてくださり、乗り心地が新車のように変わったのでした。さすが、自転車屋さん!!
さぞかし、自転車好き、メカ好き、自転車マニアだろうと斉藤さんに伺うと、答えはNOでした。
斉藤さんは、一番好きな自転車は、ロードバイクやBMXではなく、意外にもマウンテンバイクタイプだそうです。
「これなら、里山や山道、どこでも走れますよ」
「1台でなんでもできるところが好きですね」
斉藤さんは、休みの日は、自然の豊かな場所を探し、ツーリングすることが楽しみなのだそうです。

「サイクリングサークルとか、ツーリング仲間がいらっしゃるのでしょうか?」と聞くと
「そういうのは、あまり好きではなく、来店されたお客様との会話で、どこかツーリング
にいい場所ないですかね?って聞かれたら、じゃあ、週末、行きます?」って感じでご一緒する
気負いなく、お客様とツーリングを楽しむことが多いそうです。
そういえば、店内にも「ツーリング仲間募集」チラシは1枚もありませんでした。
「僕は、街の自転車になりたい」
「競技用のバイクやロードバイクも扱うし、カスタムバイクも作るし、通勤通学用の自転車も置いています」
パンク修理やタイヤの空気を入れられる街の自転車は激減しています。
かつては、壊れた自転車を魔法使いのように修理してくれる、自転車屋のオッチャンが大好きでした。
どこの商店街にも必ずありました。
危ない乗り方を叱ってくれ、「気をつけて帰れよ」と子どもたちを見守ってくれたのが自転車屋でした。
斉藤さんは、そんな街の自転車屋を目指しているのではないでしょうか。
新しいバイクの入荷案内、パーツやアウトドアアイテムなど、オシャレ過ぎるオンラインショップ
も是非、覗いてみてください。お店のコンセプトがじんわりと伝わってきます。
海外では、自転車もそのまま公共のバスや電車に乗っている様子を目にします。
日本は、交通機関会社により、ルールもまちまちで、自転車をたたみ、「輪こう袋」という
大きな袋に詰め込まないと持ち込めないのです。
CO2 の排泄がない、化石燃料を使わない自転車は、最も自然を感じることができるSDGsな移動手段ではないでしょうか。
オリンピックの競技にもなっている自転車は、立派なスポーツです。
自転車と一緒に旅ができる千葉県のB .B .BASEは、サイクリストにおすすめ。常磐線「サイクルトレイン」を利用して茨城県へツーリングも楽しそうです。
まだまだ、自転車好きには、移動環境が整っていないのが日本の現状です。
斉藤さん、4歳、8歳の女の子のパパ。
「二人とも、自転車に興味ないみたいです」「家族でツーリングに行くことはないですね〜」
とちょっぴり寂しそうでした。
黄昏時、いい感じの蛍光灯が灯る中で、ひたすらに自転車をいじっている斉藤さん、カッコいいです。
娘さんもきっと、そんな父親の背中を見て、一緒に風を感じながら走る日も遠くないと思いました。
みなさんも、どこか春の風を感じ走りたくなったら、恥ずかしがらずに、斉藤さんに声かけてみてくださいね。
「週末、行きますか?」「いいですね」そんな会話が店内から聞こえてきそうです。

E-OTTO CYCLES
営業時間 平日11:00〜19:30
日・祝日 11:00〜18:00
●定休日 火曜日・第三日曜日
上記、以外にもイベントで休む日がありますので、WEB上の営業スケジュールを確認の上、ご来店ください。
◯店のインスタグラムアカウント
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HP http://www.e-ottocycles.com
電話 03-6421-9861

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