家族が喜ぶ味、フードショップトマト

洗足池商店街を歩いて行くとすぐに緑と赤の「フードショップトマト」の看板が目に入ってきます。
「トマト」のシェフ兼看板娘が真理子さんです。娘をサポートするのがお母さんの藤本妙子さん(75歳)です。
妙子さんは新潟出身で、結婚をきっかけに、洗足池に移り住みました。

トマトの前身は乾物屋?!

今のトマトは、妙子さんの夫・芳雄さんの実家で、昭和21年から「不二屋」という屋号で乾物屋を営んでいました。
築地の乾物専門店から、とびきりの国産の豆を定期的に仕入れ、惣菜と同じようにごく普通に陳列されている理由は店の前身に寄るものでした。
乾物屋からお惣菜店「トマト」に鞍替えされ、早34年が過ぎようとしています。
妙子さんと芳雄さんの夫婦の店に新星が現れたのが29年前、長女の真理子さん。
「料理は、特に好きということではなかったのですが、両親の仕事を手伝っていたら、自然と店に立つようになりましたね」19歳で店を手伝う傍ら、夜は他店で働き、接客や料理を学ぶようになりました。

人気アイテム「かぼちゃとさつまいもサラダ」

「トマト」の常連さんは、40歳以上で、仕事を持っている方が多いそうです。
仕事帰りに、1品でも手作りの家庭の味の惣菜は何よりの手助けになります。
一番人気メニューは「かぼちゃとさつまいものサラダ」「緑黄色野菜の胡麻和え」です。毎日、欠かすことなくショーケースに並びます。
「毎定番というのも特別決めてないのですが、日替わりで毎日15品位作っていますね」
真理子シェフと妙子ママは、ちゃんと料理に役割分担がありました。
妙子さんはベテラン主婦、特技は煮物です。ホッとする惣菜の定番、「ひじき煮」「切り干し大根煮」「根菜煮」などはママの味付け。これが常連客には、鉄板メニューです。
「朝、昆布やかつお節で出汁を取るからね、余分なものは何も使わない。食材の味を生かすことが秘訣ね」
デパ地下やスーパに並ぶお惣菜の原材料表示を見ると「PH調整剤」「赤色2号」「増粘剤」などの添加物は、ごく普通に使用されています。
「トマト」は、創業以来、余分なものは何も使わないことをモットーとしています。
近所の常連の若いママさんが店に入ってきました。
「どこが気に入っていますか?」と聞くと、「これだけ豊富な食材を使って、しかも何品も料理するのは、大変でしょ。おかずも選べるのが好き!ここなら安心して買えますね」とヘルシー弁当を2品注文1300円お買い上げ。
メインは妙子さんの手作りハンバーグ。鯖の塩焼き、残りの惣菜は、ショーケースの中から好きなものを選ぶことができます。
値段も決して高いものではなく、とてもに良心的だと思われます。
真理子シェフは、最近、新しい食材「大豆ミート」にも使うようになりました。
ヴィーガンやカロリーを気にする方に人気食材「大豆ミート」を特に「ヴィーガン向き」と表現せずに、回鍋肉や炒り豆腐にごく自然に使っています。
「肉より取り扱いしやすいですし。賞味期間も気にせずにすみますね。」そうだ、大豆ミートも乾物の仲間。取り扱い術は心得ておられます。

商店街の今昔

「昔は、お祭りもあり、賑やかでした」「うちの息子はサッカーをしているんですが、
プレー中のホイッスルの音がうるさいという苦情が学校に入り、ホイッスルを吹かなくなりましたよ」
苦情に対して、地域の人たちが理解を得ることにあまりに消極的すぎるのではないかと感じました。
大型のスーパーができ、少し離れても、車で買い物に行く現代風のスタイルも定着し、
商店街の店が減っていく中で、地元の働く人たちに寄り添った店づくりを目指している真理子さん。
朝10:00開店から20:00の閉店まで、ずっと料理を作り続け、接客し、
新しいメニューを考案して1日を終えています。長時間労働?パワハラ?いえいえ、真理子さんは同じことを繰り返すからこそ、そこから新しいものを見つけています。
「お彼岸やお盆には、おはぎを作りますよ。おせち料理はお重持ってきてもらったら
詰めますよ」こんな柔軟な対応の惣菜店なかなかありません。
真理子さんに将来の夢を聞いてみたところ、「ママが店をやめると言ったら、私もやめます。それからやりたいこと、考えます。毎日、忙しくって、次のことまで考えられないです」
という言葉には、妙子ママに元気で続けて欲しいと真理子さんは願いを感じました。
今回、登場されていない父親の芳雄さんもご健在。開店・閉店の手伝いのみされているそうです。
父親、母親、娘で切り盛りするフードショップ「トマト」商店街の灯としてずっと続いて欲しいと思いました。


                      文・タカコナカムラ

営業時間 10:00〜20:00
定休日  毎週日曜日 *月1回土曜休みあり
*毎月第2、4水曜日には、お買い物された方に10%割引クーポンあり。
 予約注文承り中。